研究概要 |
80年代以降の連邦及び州政府のマンデイト条項にかかわる教育政策の実施過程研究、いわゆるインプリメンテーション研究は、連邦一州一学区の政府問関係のあり方を次第に明確にしてきている。連邦政府の役割については以下のような研究動向がみられ、マンデイト条項分析枠組みを仮設として設定できる見通しがついた。 すなわち、ピーターソンらは連邦政府の役割を以下のように規定している(When Federalism Works,1986)。連邦政府は国民から所得等に応じて幅広く徴税しており、富の再配分政策の一環として、より社会的援助を必要としている貧困家庭の子どもの補償教育や障害児教育に関する補助金政策が期待される。逆に教育そのものの研究開発における援助は規制を最小限にとどめ、州及び学区に委ねるべきであるとし、連邦政府の役割を限定している。 また、1980年代の州教育政策の学区への浸透過程を6つの州について分析したフールマンとエルモアは州が強くなれば学区が弱くなるといったゼロ・サム・ゲームのようにとらえるのは科学的でないとし、統制概念の検討を行っている(“Undersutanding Local Control in the Wake of State Education Reform,"Educational Evaluation and policy Analysis,vol.12,No.1,1990)。第一に、統制と影響との区別ができていない。例えば、多くのマンデイトは最低基準であり、すでにクリアしている学区も多いのである。第二に、連邦や州は直接のコントロールよりも教育アセスメント結果を州や学区別に公表するなどによって影響力を行使していること。第三に、州や学区を画一的に扱わず、法の適用除外を設け、学区独自の改革実践ができるようにしていることを強調する。結局、連邦及び州教育政策と学区教育政策との内容上の相互浸透と流通の程度が連邦政府や州政府の影響力を決定づけるということである。
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