本研究は、養成・採用・研修という一貫した教師教育の統合的体系の必要性に鑑みて、学校に焦点をおいて、実習生・初任者・経験年数別教諭・校長や教頭というキャリアステージを通じて、力量形成に対する教師及び教師集団の態度や意識や取り組みに関する相違を組織風土・組織文化の側面から実証的に明らかにし、教師の力量形成を促進する学校経営の開発について、学校のもつ組織風土・組織文化の側面に関する基礎的知見を得ることを目的としている。本年度は、そのための道具としての調査票の開発、及び調査を実施した。先行研究の検討を踏まえ調査票の開発を通じて、本研究によって得られた新たな知見として、主として以下の2点を指摘することができる。 1.従来、曖昧に使用されることの多かった組織風土と組織文化の概念上の相違に関し、組織風土を個人の認知する人間関係や仕事への取り組みによって醸成された雰囲気とし、組織文化を成員間に共有される支配的な価値や信念や規範の総体として捉えることが適切であること。 2.教師の力量の概念をめぐっては、従来明らかにされてきた教授・訓育・経営の力量に加えて、教職に対するコミットメントや教師の自己教育力や教師として職業的社会化で獲得される態度等にも注目する必要性を明らかにし、学校組織の特性の認知がそれらの力量の発揮に影響を与えていること。 また、開発した調査票は3タイプ5種類であり、平成5年6月実施予定のAタイプ(対象:実習生・実習校教員、2種類)、調査実施済みのBタイプ(対象:初任者(回収127名・回収率36.6%)・初任者のいる学校の校長(回収148名・回収率61.2%)、2種類)及びCタイプ(対象:校長・教頭・教諭(回収589名回収率57.2%、そのうち組織レベルでの分析が可能な学校22校、396名))である。
|