本研究の目的は、養成・採用・研修という一貫した教師教育の統合的体系の必要性に鑑み、学校に焦点をおいて、実習生・初任者・経験年数別教諭・校長や教頭というキャリア段階を通じて、力量形成に対する教師及び教師集団の態度や取り組みに関する相違を組織風土・組織文化の側面から実証的に明らかにし、教師の力量形成を促進する学校経営の開発について、学校のもつ組織風土・組織文化の側面に関する基礎的知見を得ることにある。本研究では、調査票開発(3タイプ5種類:実習生・実習校教員.初任者・赴任校校長.教諭・教頭・校長)、調査実施、調査結果の分析考察を通じて、学校の条件性との関連や規定要因の特定など、より詳細な検討は今後の課題として残されているが、以下のような諸点に有用な知見を得た。 1.組織風土・組織文化を測定する道具として、SD法による5次元(官僚制化傾向・情緒充足傾向・遊離化傾向・成長志向・自律志向)を明らかにし、記述質問項目との検討を通じてキャリア段階によって力量形成に有効な学校改善に優先される事項の差異性を明らかにした。 2.教師としての力量を、広義に、教育活動遂行の力量・自己教育力・教職へのコミットメントから捉える有効性を検討し、キャリア段階による力量の自己評価の態様と学校の組織風土イメージとの関連性を明らかにした。学校において教師の力量が形成され(特に、実習期・初任〜5年目)、その後、その力量の発揮に影響を受け、自己教育力やコミットメントの側面の力量形成には各キャリア段階を通じて影響のあることが明らかにされた。 3.組織レベルの分析考察を通じて、各学校に組織文化の確立・組織風土の耕作にとって優先される事項を取り上げるにキャリア段階に占める教諭の構成比が重要な条件性となり得ることを明らかにした。
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