本研究は、つぎの三種類の方法によって実行された。 (1)現地、北海道におけるアイヌ古老からの民族技術に関する聞き取り調査。 (2)アイヌの民族技術の歴史的変化や過去になった技術を知るため各地博物館などに収蔵されているアイヌ資料の分析。 (3)18世紀以降に記録されはじめるアイヌ民族技術に関する文献資料の発掘と整理。 その具体的な成果は、つぎの通りである。 (1)予想外にアイヌ古老から民族技術に関する情報が得られた。そのうち、重要な成果は、つぎのものがある。(a)メカジキ漁に関する技術。銛の製作技法の解明。メカジキ漁の方法。解体の手順などである。ことに漁のポイントの存在をはじめて明らかにできた。(b)機織り技術。ことにアットゥシ技術以外のイラクサやツルウメモドキの処理について明らかにできた。(c)樺皮製品の製作技術。この技術体系をはじめて把握できたことなどである。 (2)これに関しては、ことに容器製作における接合・接着技術を解明できたこと。また、アイヌの民族文様に関して18世紀から現在にいたるモチーフや施文技術の変化の過程を明らかにできた。 (3)板綴り船に関する技術の再生と性能に関する調査研究。クワサキの祭具としての機能の復元的研究。
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