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本年度は当初の計画通り、上記課題のうち、元治・慶応期(1864〜67)を中心として研究を行なった。その結果、得られた研究成果の概要はつぎのとおりである。
【.encircled1.】落首・落書のたぐいは元治元年(1864)に多い。しかしその内容は、将軍や朝延に対し、以前に比べて遠慮がなく直截的な傾向が認められる。
【.encircled2.】落首・落書の作られた地域を、関東と関西に大別すると、概して関東は佐幕的であり、関西は親薩長的である。とくに慶応年間(1865〜67)の大坂は、反幕府的なものが顕著である。
【.encircled3.】上記の傾向は、たんに落首・落書のたぐいにとどまらず、この時期の浮世絵諷刺画においても認めることができる。
【.encircled4.】「筏の一夢」と題した捨文(慶応元年仲秋の奥書がある)は、慶応2年(1866)8月13日、江戸四日市自身番屋内に縄に吊してあったのを、同月15日同町内より届け出たものである。その内容は当時の政治・社会情勢を明確に把握し、批判したものである。
【.encircled5.】同じころの著作と思われる「憂天私言」は、東武書林万屋兵四郎著述といわれているが詳かではない。それは当時注目されたらしく、広く流布した形跡がある。
落首・落書のたぐいは刊本によりある程度把握できるが、未刊のものは少なくない。とくに【.encircled4.】や【.encircled5.】のような史料や諷刺画は貴重なものが多く、未開拓の分野といえよう。今後の研究がのぞまれる。
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