今年度は、「交付申請書」にも記したとおり、オリーヴィ原典の蒐集とその解読に当てられた。 まず前者、原点蒐集については、現在公刊されているもののうち8割方のものを集めることができた。しかしこのうち半分近くを占めるStudi Francescani(フランチェスコ会の研究誌、原典の翻刻を多く含む)は、書店の都合で納品が遅れたため、これに収められている原典の分析は次年度に回すことにした。また当初予定していた、手稿本のマイクロフィルムコピーの入手は、ヨーロッパの文書館の都合からごく一部にとどまらざるをえなかった。 これらの原典にもとづき本年度に行ったのは、まず第一にその解読である。オリーヴィの経済思想がよく現れている著作を中心に解読作業を進め、とくに重要なものは翻訳した。とりわけ当面もっとも重要な研究課題である彼の徴利論(『売買・利子・返還論』の第二部)は、全面的に翻訳した。この翻訳および他の原典の検討にもとづき、来年度は彼の徴利論の画期的性格を、「石か種子か」(仮題)という論文で論ずる予定であり、現在その準備に取りかかっている。この論文では、オリーヴィの用いる「種子的原理」という概念に焦点が合わせられることになる。またオリーヴィは商業の社会的有用性を主張するさい、「必要」と「有益」という語を用いた一連の議論を展開している。この点は本研究の開始以前から明らかになっていたことだが、本年度の研究でこの「必要」「有益」の二語を用いる商業擁護論が、従来考えられていたよりはるかに広く深い根をもつ議論であることが明らかになった。この議論の起源と展開を探ることが、次年度のもう一つの課題となる。
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