遺物の原材産地推定: 糸魚川産以外の日高産翡翠の拡散について研究を行なってきた。北海道余市町の大川遺跡のヒスイ製勾玉の中に産地分析を行ったところ、勾玉の多くは糸魚川産ヒスイ原石が使用されていたが、1個に日高および富良野市の地域から採取される原石が使用されていることが明らかになり、また飛騨地域原産地の地元の西田遺跡で未加工のヒスイ様原石が飛騨原石と同定できた。両遺跡で糸魚川産以外のヒスイ様玉材が使用されたことを確認できたことにより考古学上に新たな資料が提供できた。また、碧玉では玉谷産地より8Kmの近距離に位置する豊岡市の女代南遺跡より出土した約100個の碧玉製遺物の産地分析で、玉谷産原石は剥片の約40%に確認されたが管玉製作行程中の玉材には殆ど見られず、原産地が同定されなかった碧玉玉材は同質の組成を示すことを発見した。この産地不明の遺物で群(女代南B群)を作り、この碧玉の使用している分布圏が滋賀県、兵庫県、大阪府、鳥取県、島根県に広がっていることを明らかにした。また、これらの地域の古墳時代では花仙山産原石を使用した玉類が、九州南部でも使用されることが本研究で明らかになった。 原産地調査と原石群の確立:本年度は旭川市神居コタン地域および空知川流域の調査を行い神居コタン産ヒスイが他のヒスイと区別できることが明らかになった。空知川流域のヒスイ様原石は日高産ヒスイと同質あった。玉類の産地分析を行ったとき、日高および飛騨地域のヒスイ(軟玉)は相互に組成が似ているために、両原産地に同定されることがある。本年度、空知川から良質の碧玉原石が採取されることを発見し空知原石の群を確立した。また、この群は蛍光X線分析法とESR法の併用により、容易に他の群と区別できることが分かった。
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