この研究で研究代表者福永は、共同墓地構造の時期的変化をあきらかにすることによってわが国原始古代における社会変化の画期を探ろうと試みた。今年度は第2年目であり研究を総括する年度である。 今年度も昨年度以来進めてきた原始古代共同墓地にかんする調査事例の収集と、分析を行った。さらに、実際に発掘現場に赴き、遺跡の立地、群集度合、周辺遺跡との関連などの点について検討した。 こうした諸事例の検討の結果、本研究の成果をまとめるためには、古墳時代開始期前後に出現してくるいわゆる密集土壙群の機能的検討と、その墓葬としての歴史的評価を中心に据えることが最も有効であると考えた。主要な作業として、その機能を巡って墓葬説、粘土採掘壙説などの論争が続いている密集土壙群について、各遺跡における立地、分布、形態、出土遺物などを検討することによってその機能を検討した。 その結果、密集土壙群のなかには(1)内部に木棺が使用された例が少数認められること、(2)他の墳墓遺構と共存する例がある、(3)自然科学的分析(リン分析、脂肪酸分析)によって人体埋葬された可能性が高いと考えられる土壙が存在する、などの事例があきらかになった。つまり、この種の遺構の中に確実に墓葬が含まれていることが指摘できるのである。 こうして、社会の階層分化の進展によって、等質的な方形周溝墓群からなる弥生時代の墓制が分解し、古墳時代になると墳丘を持つ少数の古墳と墳丘を持たない多数の密集土壙群からなる新たな墓制構造がうまれるという古代墓制の大きな画期を明らかにした。また、墓制におけるこうした大きな変化は背後にある共同体分解などの社会変化をも反映していると考えられるのである。なお、これらの研究成果について報告書を刊行した。
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