研究概要 |
今年度は,研究目的達成のための基礎的な資料調査を前年度に続いて更に行いつつ、資料処理の仕方の方法について考察を進め、『悉曇字記真釈』をテキストとしてその試みを実行した。その結果、本研究の所期の目的は達せられたと判断された。なお、研究過程において、本研究の目的そのものには直接関わらないものの、日本漢字音上の問題を取り扱っている点においては密接に関係している、裏面に記した論文を発表しできた。また、本年6月には、本研究を踏まえた成果の一部が公にされる。 (1)京都・奈良地方の大学図書館等所蔵の近世漢字音資料の調査を行った。体系化には、呉音・漢音・唐音加点の『聚分韻略』が有力な資料であることが分かったが、この書加点の字音は、量的に余りにも多く、研究者一人の本研究でとりあげるテキストとしては大部に過ぎると認められた。そこで、前年度までの検討を踏まえつつ、個人的に以前より収集している近世漢字音資料の内から、本研究の目的と規模から処理可能なテキストとして、最終的には、行智著『悉曇字記真釈』を選定した。その理由は、この書が近世漢字音資料としてユニークでありかつ今後における多大な利用が見込まれる所にある。 (2)上記資料の漢字音のコンピュータによる資料処理に際しては、本研究の程度・規模については、先学からの助言などにより、「一太郎」の検索システムで十分と判断されたので、それによりつつデータ処理を行った。 (3)現在、上記作業のとりまとめが一応終了した段階にある。今後、その成果をまとめ、学会等に発表するとともに、今年度中に他研究者にこの成果を利用できるようなシステムを完成する予定である。
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