(1)前年度に引き続き『河海抄』諸伝本の総合的調査を行った。平成5年度は佐賀大学鍋島文庫蔵本・学習院大学附属図書館蔵本・三手文庫今井似閑本・熊本大学北岡文庫本等の伝本の調査・写真撮影を行い、可能な限り紙焼を入手。『校本河海抄』を作るべく、基礎的な構想を固めた。ただし、膨大な資料であるため、早急に取りまとめることは不可能であり、長期計画となるであろう。 (2)本年度は総合索引作成の全段階として、試験的に黒川本『異本紫明抄』の索引作りに着手。固有名詞・主要術語などを抜き出し、カード化の予備作業を行った。その作業の過程で、漢文の取り扱いや人名の採択基準等に関し、一般的基準の定め難さが問題として残った。各古注釈書それぞれの質の違いも存在する。総合索引としては、採択基準が異ならないようにすべきである。今後、出た採択基準を厳格に見極めねばならないだろう。黒川本『異本紫明抄』の固有名詞・主要術語索引は、出来るだけ速やかに研究成果報告書として取りまとめたい。 (3)将来的に公開予定のMS-DOS汎用データベースソフトの使用案をほぼ固めたが、これは、ソフトウェア開発業者と共に開発・試験運用する必要がある。最終的目標である、『源氏物語古注釈書総合索引』の検索ツールとして、まず実用に耐え得るものとしたいが本年度は不可能であった。
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