塚原渋柿園の著作及び渋柿園に関する批評・研究について探索し、できる限り多く複写をとった。それらの資料に基づいて、『近代文学研究叢書』第十七巻(昭和女子大学光葉会)所蔵の、塚原渋柿園の「著作年表」及び「資料年表」の増補・訂正版を作成した。渋柿園の著作については42点の新資料を追加確認することができた。渋柿園に関する研究資料については55点の新資料を追加確認することができた。両者とも、その他多くの項目について『近代文学研究叢書』の誤りを訂正することができた。『近代文学研究叢書』の改訂版が出されない限り、塚原渋柿園の著作資料・研究参考文献資料としては、菊池作成の新資料に拠るべきであると、自信を持って言える。 塚原渋柿園の筆名について、資料を整理し、若干の考証を加えた。「渋柿園」という号の由来としては、明治8年に新聞条例に触れ、禁獄10ヶ月・罰金百円の判決を言い渡されたことが大きな影響を及ぼしているのではないかと考えた。 塚原渋柿園が後代文学に与えた影響や、文学史における渋柿園の位置付けなどについては、碧瑠璃園・吉川英治・司馬遼太郎などとの関連を中心に、今後なお詳しく研究していく必要があると思う。 渋柿園の文学について、年代によって傾向を異にしていれば、時期区分・傾向分類も可能かと考えたが、明確な区切りや傾向の差違は見出せなかった。
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