研究課題
一般研究(C)
斉藤は19世紀イギリス小説に見られる西インドの奴隷の題材を取り上げ、「他者としてのオリエント」の視点から解読を試みた。有馬は西欧人T.S.エリオットの視点から見たインド思想とインド人や東洋人のインド思想との間の微妙な食い違いを指摘した。Robinsonは日本詩の伝統が英米の現代詩に与えた影響について検討し、本人を含めた20世紀の英国詩人による、日本の詩形式の受容とその西洋的再生を考察した。鈴木は18世紀英国の文壇を代表するDr.Johnsonを中心に、東洋の社会・文化に対する関心を論じ、古典主義の普遍的人間性探求が東洋文化の再発見にもつながった当時の状況を考察した。石幡はロマン派の詩作品の特徴の一つである異国情緒趣味や東洋への関心を、逆に東洋からの見直しという観点から解釈してみた。また、小沢はルネサンス期の芝居の東方への関心や日本への直接言及などを取り上げ、これまで看過されてきた東方の概念を探った。その成果として、小沢は平成5年度の日本英文学会全国大会のシンポジアムで「The TempestとシェイクスピアのPacifism」と題して発表した。これは加筆して、デラウェア大学出版局から出版されるシェイクスピア論集に掲載される予定である。また、石幡は本研究に基づき国際文化研究科での講義(「Keatsに見られる異教徒東洋」)を行った。以上のような具体的な研究成果の開陳と批評を通じて、従来の西洋的視点とは異なる、東洋的視点に立つ総合的なオリエンタリズム像の一面を解明できた。