(1)国有企業私有化法(90年7月法)にもとづいて株式会社化され、90年11月〜91年1月に株式が売却されたパイロット=ケース5社の株式公募状況とワルシャワ証券取引所における株価の動向を検討した。それによれば、ダイナミックな有価証券市場の形成をリードするものと期待されたこれら「優良企業」の私有化が、一部を除いて株式投資への十分な関心を呼び起こしていないことが明かとなった。 (2)経済改革、とりわけ私有化についての各種世論調査結果を蒐集し検討した。それによれば、私有化を支持する意見とならんで、私有化にたいする懐疑的な意見も少なくなく、従業員所有・従業員自主管理への志向も根強くのこっていることが明らかとなった。従業員自主管理については、80年から90年に至る自主管理運動の軌跡についての整理を試みた。 (3)私有化の不十分な進捗状況を打開するために第2段階の私有化構想として提起されている「全市民的[普遍的]私有化計画PPP」について検討した。全市民を所有者にすることによる私有化の促進、資産評価の困難性とコストの回避、所有権を引き渡すことなく外国の経営経験を吸収するのに適合的な経営形態の創出がそのねらいであることが明らかとなった。 (4)1991年10月におこなわれた議会選挙のさいの、私有化についての各党の政策を検討した。 (5)新潟(1992年8月)および小樽(同9月)においてそれぞれ実施された日本とロシアの経済学者を中心とするシンポジウムに出席し、ロシア極東地域における経済改革の動向についての知見を得た。
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