本研究課題のうち、平成4年度研究実施計画である、ドイツの州レベルにおける住民投票制度に関する概要の考察はほぼ終了し、現在、論文を執筆中である(佐賀大学経済論集第26巻2号〔平成5年5月発行〕掲載予定)。法律の制定・改廃及び憲法改正請求に関しては、旧西ドイツ地域のベルリン、ハンブルク、ニーダーザクセンを除く8州がこの制度を有し、バイエルンとノルトライン=ヴェストファーレンの2州には比較的多くのかつ効果的な実例が見られるが、その他の州ではこの制度はほとんど利用されていない。確かに、州民投票成立要件の厳格さ(例えば、BW州では州民請願に有権者の1/6、州民投票に同1/3の賛成を要する)もその一因であろうが、本来州民投票制度は代表民主制度を補完する役割が期待されているにすぎず、それにとって替わるべきものではないこと、また旧東ドイツ地域の5州もこの制度を憲法草案に盛り込んでいること、並びにシュレスヴィヒ=ホルシュタイン州は1990年の憲法改正により初めてこの制度を導入したこと等を考えあわせると、利用の頻度のみによりその可否を判断すべきではないように思われる。これらの実例の分析及びこの制度の採否を巡る州議会での議論の紹介はもちろん論文の中で行うが、この制度・手続上の基本的特徴として、例えば必ず議会を経由する間接的レフェレンダムであること、租税法・予算等の財政問題は投票の対象から除外されていること、さらに法律案の内容に対する合憲性審査が州政府あるいは州憲法裁判所により行われること(請願不許可決定を巡る訴訟数は比較的多く、第41回九州公法判例研究会〔本年2月26日・九州大学〕において報告した)等も判明した。これによりわが地方自治における直接請求制度との比較法制度的考察上、両者の共通点及び相違点が明らかとなり、今後の同制度の検討の一助になると考える。平成5年度は、当初の予定通り、市町村レベルでの同制度の研究を行う。
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