1.本研究は、国際人権規約やヨーロッパ人権条約等の人権諸条約及びその他の国際機関が採択した諸文書(被拘禁者権利宣言等)の解釈・適用を検討することによって、わが国の現行刑事手続関連法がこれらの国際的人権基準に矛盾・抵触しているか否かの点につき考察することを目的としている。また本研究は、かかる分析を通じて、国内刑事手続と国際人権基準との抵触問題を明らかにすることによって、わが国の刑事被拘禁者の権利保障に関する建設的な議論の深化に貢献しようとするものである。 2.既に、被疑者の弁護人依頼権につき接見交通権及び無料の弁護を受ける権利に関する研究を手がけてきた。これを契機に体系的研究として完成させるために、まず序論的考察部分として刑事被拘禁者の国際的人権保障に関する「法源」の分析が必要であると考え、現在その作業を進めている。 3.各論部分としては、すでに公表した研究に加えて、今後「代用監獄問題」、「被疑者の保釈」、「取り調べ時の弁護人立会権」保障等の我が国の刑事手続き上の問題点を国際人権法の視点から考察する方針である。これらの点についても、ヨーロッパ人権条約や国際人権規約関係の文献資料の収集に努めてきた結果、有用な判例等も存在することが分かった。また、この分野での欧米の研究動向も掌握できつつあるので、まとめの作業を急ぎたい。
|