本研究は、刑事被拘禁者(被疑者、被告人、受刑者など)の諸権利に関する国際人権法の解釈・適用に関する実証分析を通じて、我が国の刑事拘禁制動のいくつかの側面が国際的義務に一致しているかどうかを検証することを目的とする。 まず第1に、本研究の特有の視点として、国際人権法の意義を確認する。従来、被拘禁者の権利問題は専ら国内刑事法又は比較法的な方法によって考察されてきたが、本研究が国際人権法という視点からこの問題を考察刷る意義を説く。 第2に、国際人権法の法源および解釈原理について一般的考察を加えておく。国際人権法も広く様々な分野に関連しているが、特にこの課題に関連する条約規定と重要な宣言をまとめておく。さらに、国際人権法の解釈、適用の原理についても、国内法とは異なる原則があるので、それら詳説しておく。 第3には、被疑者、被告人の諸権利の問題のある側面を考察する。特に、被疑者段階では、弁護人依頼権を実質的に保障すべき接見交通権が制約されていることが、従来より大きな議論の対象となっている。わが国にみられるような接見の指定制度は、自由権規約の解釈からみて抵触する可能性が強いことを論ずる。また、被疑者には、国選弁護人の制度が適用されていないことも、国際人権の視点から不十分であることを論ずる。 第4に、受刑者については、国際人権法では受刑者が一般市民と同様に権利の亨有主体であることを原則とする。受刑者の処偶上も国際的な原則に一致するものでなければならない。人権規約およびヨーロッパ人権条約の分析により、処偶一般をはじめ、信書の発受、弁護士との接見等に関する制約について監獄法および同規則に基づく現行法を批判的に検討する。 以上により、本研究は我が国の刑事司法改革の議論に国際人権の視点から一石を投じようとするものである。
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