イタリアにおいて、旧憲法的価値に基づく法制度を新憲法に適合的なものに改革していくうえで、初期の憲法裁判所が独自の役割を担ったこと、その過程でドイツと同様に、憲法裁判所とその他の司法部との間に葛藤が存在したことを知ることができた。 スペインの憲法訴願においては、人権オンブズマンとも言うべき制度があり、人権(法的利益)を侵害されたと主張する当事者以外にも出訴の道が開かれていること、これに基づいて当事者からの訴えの有無にかかわりなくオンブズマンが当事者に代わって憲法訴願を提起できるだけでなく、スペインでは主観的権利として認められていない社会権の実現などに関して、このオンブズマン提起の憲法訴願が重要な役割を果たしていることを明らかにした。 混成型違憲審査制は、ポルトガル独自のものであると考えてきたが、中南米諸国でも広く見られる制度であることが明らかになった。そのうち、ブラジルやベネズエラ、コロンビアでは、非集中型違憲審査制を基礎として最高裁判所の違憲判決に特別の効力を認める制度がかなり古くから存在してきたが、グアテマラ、ペルーではポルトガル同様、憲法裁判所の新設によって混成型違憲審査制となった。このように混成型は最高裁判所型と、憲法裁判所型の2種類に分類できることが分かった。前者は日本の81条解釈における少数説を具体化したものともいえるが、その評価は今後の課題である。 また、憲法判例が国政において重要度を増すにしたがってドイツで議論されるようになった立法権・立法過程の「司法化」ないし「法化」という現象が、事前の抽象的規範統制が行われるフランスにおいても最近になって大きな問題となっていることを知ったのは有意義であった。
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