地域における水行政の実態観察から、種々の成果と今後の研究目標が得られた。各地方自治体が、理論の整備を待ちきれずに行なう施策の数々から、現代社会における水問題の重要性を再確認し、各地域における過去の施策を辿ることによって、水問題の地域性にあらためて驚異を覚えている。本年度の調査を通じて、従来から存した理論的課題、たとえば条例による財産権制約の問題等を整備する必要性が再確認され、加えて、以下の課題をも与えられるところとなっている。第一に、地下水の規制を巡って、自治体の法的可能性を設定しなければならない。地下水が公水か否か、条例による規制に馴染むか否か等の基本問題すら、確定されていない現状である。第二に、清流保全条例、水道水源保護条例等の制定にあたり、根拠条文の確定を求められるが、これも明確ではない。財産権を制約できる根拠を明示する例は少ない。第三に、地方自治体に与えられている罰則制定権に関連して、国家司法権による実現以外の方法を模索する実験に対し、正当な位置付けを試みなければならない。たとえば、自治体による給水拒否、許認可、立入り検査等の諸手段は、国家司法権による強制措置に替れるのか、理論的根拠をどのように構成するか等の課題について、直ちに検討しなければならない。この点に関し、自治体は、理論的整備を待たずに、実験を開始しているからである。第四に、河川管理権の本質について明確にしなければならない。河川管理については、自治体に管理権のない場合が多いにもかかわらず、地方自治法第2条第3項により地方自治体の事務範囲にまれているのであるから、管理権の本質を明らかにし、その範囲を明確にすることは、河川に関する自治体の権限範囲を直ちに明らかにすることになる。以上の点を本年度に検討することとする。
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