本年は、自動車、機械、薬品、食品、家庭用品、ガス器具、不動産、農産物、その他という9種の製品についての栽判例と、渉外製造物責任をめぐる栽判例、計200件をとりあげ、それに法的分析を施す仕事が中心であった。その仕事を12月までで完成させた後、現在は、「総合判例リステイトメント・製造物責任」という形で、現在の製造物責任をめぐる栽判規範の到達点を、製造物責任法理の枠組みに沿って総合的にリステイトし、現在の判例法の到達点を客観的に示すことに、まずは努めている。その上で、現在の栽判例の状況から、現行法上かなり問題があると思われる点に関し、私自身の解釈論の提言を行う予定である。その全体像をここで示せば、それは以下のようである。 第一節総論、第二節製造物責任の法的性格(製造物責任の一般論、その根拠法条、無過失責任論、過失責任論、保証責任論、債〓者代位構成等)、第三節製造物(農産物と不動産、未完成製造物と仮設製品、製品の自己使用と非流通性、製品の耐用年数)、第四節責任主体(製造業者、輸入業者、販売業者、設計者、部品メーカー、修理・整備業者、国等の監督責任)、第五節過失と欠陥(過失、欠陥、通常使用と用法違反)、第六節因果関係(立証の困難、因果関係の推定、疫学的因果関係、情況証拠からの立証と蓋然性説)、第七節損害論(損害の種類、被害者は誰か、包括一律請求、インフレ算入論)、第八節多数当事者の関係(不真正連帯責任論、求償、分割責任論、検索・〓告の抗弁、補助参加、訴訟告知)、第九節時効。 以上のような形で現行判例法の到達点を明らかにした後、製造物責任立法のあるべき姿を考察し、我々自身の立法提案を来年度発表したいと考えている。
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