本研究は1992年の参議院議員選挙の運動期間中に集められたデータをもとにしており、対象者は茨城県内の有権者約千人である。政治家としての候補者のイメージ及びそれを左右する要因を特定するために、回答者に対しては、各候補者に関する質問の他に、メディア・チャネルとの接触パターン、政治的態度、政治活動、またデモグラフィック的な変数についてもたずねている。 ここから得られた結果によると、ニュース・メディアとの接触は、候補者に対する態度やイメージを決定するのみならず、同時に政界に対する一般的なイメージにも影響するということがわかった。活字及び放送の両メディアとの接触が高い有権者は政治的な知識も豊富であり、選挙における投票の意志も高い上、政治に対する関心も高いのである。総じて、候補者に対するイメージは政治活動と密接な関係を持ち、さらに複雑なイメージとなると政治に関する話題をしたがる、とか選挙に対する投票意向などに関係している。さらに政治的な信頼、有効性感覚、知識などはおおむね候補者に対する見方、一般的な政界についてのさらに複雑なイメージにも関係しているのである。 日本における政治的イメージには明確な特徴がみられるが、ある程度は欧米社会、特にアメリカにおける政治的イメージとの共通点もある。日本の有権者は、候補者の外見や話し方に注目し、これらのきわめて限定された要因をもとにイメージをつくるという傾向にある。政策課題やイデオロギーはイメージに対しさほど重要な影響を与えていないようである。これは日本人とアメリカ人のそれぞれがリーダーを認識する際の最も重要な違いであり、この二つの国における政治文化の違いを反映しているといえよう。
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