1991年度の日本のODA供与実績が2年ぶりに米国を上回った事に加え、政府開発援助大綱の発表や日本のODA関連の研究書の相次ぐ発売に、日本の政府開発援助に関する関心の高まりをあらためて実感している。 海外経済協力基金や国際協力事業団でのインタビューでは、書籍からは得られない生の情報、援助担当機関で実務についている方々の視点からの意見に触れることができ、たいへん参考になった。また、タイ・バングラデシュへの援助プロジェクト視察旅行を行ない、この際にお世話になったOECF・JICAの方々からも、より実務に密着した部分での意見・情報を得ることができた。 資料収集とその整理作業はほぼ完了し、モデルの構築に入っているが、分析結果はまだでていないため、その意味での新しい知見はまだ得られていない。 平成5年度においては、供与された援助は途上国の経済成長と分配の平等にどのような貢献をするのか、に焦点をあて、いくつかの仮説を検証する。その際、合理的行為者としての政策決定者の公的な消費一投資行動が、財政的拘束の下で、供与された援助や国内の課税などとどう関連するか、を分析する一種の同時方程式モデルを作成することで、援助と発展・平等に関するより一般的なマクロ分析を補強しようと考えている。資料の収集は、アジア地域に関する研究機関でのインタビューと平行して行なう予定である。
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