本研究の課題は、資本財の耐久性を導入した経済動学モデルを対象に、「生産の効率性定理」(以下、効率性定理)を拡張することである。効率性定理をめぐる従来の研究では、生産された財は消費財あるいは資本財として利用され、次期への持ち越しはできないもの(100%の減耗率)と想定されてきた。本研究では、標準的な世代重層モデルにおいて、耐久資本財を仮定し、効率性定理の一般化を試みた。また競争均衡の存在・一意性を確めると共に、資本財のビンテイジ構成を分析した。主要な結果は以下のとおりである。 1.耐久資本財(1種類)の生産を考え、世代重層モデル上で競争均衡を定義する。固定係数をもつ生産関数を想定すると、係数の値に制約されるものの均衡の存在が示される。また一意性は一般に得られない。更に技術進歩を具体化した資本財のビンテイジ構成は、均衡において単調な減少関数で示される。 2.生産関数に、規模に関する収穫逓減と要素間の代替を仮定するとき、競争均衡は存在し、その数は非可算的である。また資本財のビンテイジ構成は、時間の経過と共にシフトするが、その方向は確定できなかった。しかし定常状態でのビンテイジ構成は、単調な減少関数で示される。 3.2.での競争均衡が生産効率的であるか、を判定するためには、資本財が耐久性とビンテイジをもつことから従来の効率性定理を拡張する必要があった。定常状態については拡張された効率性定理が証明された。しかし非定常状態については、十分性と必要性のいづれについても結果は得られていない。 4.2.と3.の結果から、世代重層モデルの競争均衡は定常状態において生産効率的であることが示される。
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