平成4年度の研究は、前年度の研究の延長線上でのより詳細な情報収集とその分析にあてられた。具体的には、アパレルのなかでも、紳士物の背広に焦点を合わせて、生産から流通にいたる各段階での取引慣行を主たる分析対象とした。折りからの、「バブル」の崩壊と消費の低迷が、研究上の関心をより刺激する結果となった。 平成4年8月にCanberraのAuatralian National Universityで開かれた“JAPAN AND AUSTRALIAN WOOL"の最終Conferenceには、前年度のものを大幅に改訂した論文(別掲)を報告した。いずれも改訂のうえ近刊の英文の書物に収録の予定である。さらに、現在、両名が中心になって、日本の毛織物産業に焦点を合わせた、日本の取引慣行に関する書物を取りまとめる作業が進行中であるが、その完成、出版には、少なくとももう一年程度の時間が必要である。これが完成すれば、複雑といわれる日本の取引慣行のなかでも、とりわけ複雑といわれる分野に関する、詳細な事実に基づいた見通しのよい分析として基本的な文献となるはずである。以上のように、この研究プロジェクトは大きな成果を上げたと評価できるだろう。 加工食品分野に関しても情報の収集は精力的に進めたが、現時点では、アパレル分野の分析に際して参照すべき情報として利用するにとどまっており、その取りまとめと分析は今後の課題となる。 なお、研究発表の書物の欄に掲げたものは、このプロジェクトの直接の成果とはいえないが、この研究プロジェクトから得た知見が大きく貢献したものであるので、ここに掲げた。
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