1.「労働力の女性化」にかかわる文献の蒐集と文献目録の作成について。経済学理論、社会政策、社会保障、歴史学、社会学などの分野にわたって、ひろく「女性労働」の問題を扱った文献を蒐集し、その大まかな目録を作成した。 2.こうした分野でこれまで基礎的な概念だとされてきたもの「家族」「家事労働」「労働市場」「労働過程」「労働運動」などについて、フェミニズムの視点から再検討をおこなった。とりわけこれまで所与のものとされてきた「家族」と「労働市場」について、アダム・スミスやカール・マルクスなどの古典的な経済理論においてどのように取り扱われてきたかを、批判的に検討し、その検討の成果を「家事労働の経済学」として発表することになっている。 3.今日のイギリスやアメリカの経済学における「労働力の女性化」研究について、それを批判的に検討した。その成果は、(1)ヴェロニカ・ビーチのUnequal Workを翻訳し出版した。この過程において、「労働力の女性化」という問題は、経済学がモデルとしてきた労働者像の大転換をはかるものであることが、明らかになった。そして、「家族賃金」を担った男性熟練労働者(日本では年功序列、終身雇用制)がモデル労働者であるとされて来た問題が、明らかになり、女性の固有の領域とされてきた不熟練のパート労働者を正面において、経済学を理論化する必要があることがはっきりしてきた。(2)この問題について1992年度「社会思想史学会」年次大会において報告した。「労働力の女性化」は、女性労働の固有の特殊な問題なのではなくて、将来の労働力の基本的な形態になるのではないかと予測される。
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