定常時系列プロセスのガウス性の検定は、基本的には多変量正規性の検定問題の中に埋め込むことができる、という視点から多変量正規性の検定法を確立し、その応用として定常時系列プロセスのガウス性を扱った。最初に対立仮説を包括的(オムニバス)対立仮説をとり、与えられたp次元の変量を基準化し、エルミート多項式変換する。この変換されたp個の変量は、もし正規性が成立すれば、きわめて単純なモーメント構造をもつ。そこで、そのモーメント構造を、与えられたデータに、対応した変換を行い検定する。検定統計量は、漸近的にカイ2乗検定する。また、その統計量を対称性についての検定統計量と、歪みについての検定統計量に分解し、それぞれカイ2乗検定することを示した。このアプローチの定常時系列への応用として、一変量時系列に対してp次の(過去の)変量をとり、それを基準化・エルミート多項式変換し、Keenan(1983)の漸近的結果を用いて、対応する検定統計量が漸近的にカイ2乗分布することを示した。実際の応用例としては、山形大学の照井氏と一緒に株価収益率の一変量時系列としてのガウス性を検定し、東証指数や日経平均はガウス性をもたないと推論している。個別銘柄への応用は現在調査中である。(なお、上の結果は、Chicago大学Tsay氏、Li氏、照井氏と共著。) 他のアプローチとして、多変量正規性の検定問題として局所対立仮説をとり、局所最良不変的検定を導出した(Texas大学のE.George氏と共著)。中でも、Mardia検定が局所最良不変検定となる分布族を明らかにした。検定統計量の漸近的正規性、検出力関数の漸近的局所行動を示している。一変量時系列に対して、局所分布族を対立仮説としたガウス性の検定は今後の課題である。
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