わが国の企業福祉は現在大きな曲がり角にたっている。一つには、「高齢化社会」の到来によって定年制や終身雇用制など雇用管理に変化を生じているためであり、二つには、「経済のサービス化」によってパートタイマーの急増に見られるように就業形態に変化が起こっているためである。これらの動向は労働力の「定着」を目的とする従来の企業福祉の理念と方法はもはや運用しないことを物語るといえよう。すなわち、企業は高齢化社会に対応し退職一時金を年金に転換しつつあるが、さらに経済のサービス化に対応して、アメリカのように年金権の移動性を確保することがこれからの課題となろう。 新動向の行方と問題の所在を実態調査研究を通じて明らかにするのが本研究の目的であるが、そのために初年度は次の2つの分野で研究を進めた。 (1)企業福祉に関する内外の理論的・実態的資料の収拾と整備を図った。とくに企業福祉の先進国であるアメリカの実態と問題点については精力的に資料の収拾に努めた。アメリカ企業福祉では健康保険とならんで「従業員持株制度(ESOP)」がクローズアップされていることから、積極的にこれについての情報を収拾し、解析することとした。 (2)同時に、わが国の企業福祉の実態を探るため、企業福祉の制度実態に関する基本調査(個別的聞き取り調査)を実施した。また加えて「従業員持株制度」を持つと見られる50社に対して、企業年金を含めた総合的なアンケート調査を実施し、その結果の一次解析を行っているところである。 次年度も引き続き理論的・実態的に研究を進め、初年度の成果を踏まえて、新時代の方向性を引き出したいと考えている。
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