ほぼ当初予定どおりに、次の3つの作業を並行的に進めた。 第1に、過去2年間の作業を受け継ぐ形で、知的所有権にかかわる企業間レベルならびに政府間レベルの双方での日米紛争の実態をより明確につかみ、個別事例の特質と同時に紛争の全体的なトレンドを明らかにするように努めた。 第2に、特許や知的所有権にかかわる経済理論のありかを探り、その上で現実との対比を通じてそれらの吟味をおこなう作業に着手した。本格的研究は今後を期さざるをえないが、技術的普及と発明奨励の矛盾、テクノ・グローバリズムとテクノ・ナショナリズムの相克など、深めるべき点を明確にできたのは一応の収穫だと考える。 第3に、本研究の最終年度として、研究成果の集約作業にあたった。日米間での知的所有権係争の激化に注目し、実情把握と知的所有権の経済的意味の解明に努めることが、本研究の主題であった。そのためには、米国企業の知的所有権戦略が「戦略法務」の一環をなし、米国政府の知的所有権戦略が産業競争力強化政策の一翼に位置づけられている事情を勘案して、アメリカ側の企業・国家戦略の総体にまで視線を配る必要があるということで、日米ハイテク摩擦全般を常に意識した広がりのある視野での考察を心がけるようにした。そうしたアプローチを採用した単著として1994年12月に『日米ハイテク摩擦と知的所有権』(有斐閣)を刊行できたのは、本研究に負うところが大である。
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