大都市経済圏の「都市型産業」として、情報関連産業、ファッション産業、ハイテク産業の研究開発部門があるが、本研究ではファッション産業、とくに履物産業(ケミカルサンダル、ケミカルシューズ産業)をとりあげた。大阪市、神戸市の製造業、卸売業の中でも、この産業は量的にも重要な地位を占めるとともに、在日韓国・朝鮮人の経営者と従業者が産業のにない手であり、日本人経営者と共存している産業でもある。 今年度は次のような調査研究をおこなった。 (1)東京都、大阪府(さらに大阪市)の製造業の特化係数を「工業統計」によって算出し、「都市型産業」を検出した。 (2)全国ケミカルサンダル工業組合連合会を構成する9組合の資料を収集し、時系列データを作成し、それを加工し、産地間の特徴(すみわけ)の実態と、その変化(立地移動)をさぐった。その結果、静岡、大阪、東京の産地の特徴と、近年の大阪への集中傾向がうかがえた。(ケミカルサンダルからケミカルサンダルへの製品のシフトも進みつつある。)さらに、9産地の労働力構成、労働条件の格差もわかった。 (3)大阪サンダル産地と競合関係にある静岡市サンダル業界のヒアリングをおこなった。 (4)サンダルと製品面で関連のあるケミカルシューズの特産地である神戸市のヒアリング、見本市の見学をおこなった。 (5)大阪のサンダル3組合の協力を得て、3組合傘下企業85社に対して郵送方式による全数調査をおこなった。 以上の調査研究にもとづいて、(1)、(2)の成果を「桃山学院大学総会研究所紀要」18巻3号に発表した。(3)、(4)、(5)の成果は同紀要の19巻1号に掲載する予定である。産業政策との関連は今後継続して研究したい。
|