研究概要 |
平成4年度の研究を大別すると,1.朝鮮人強制連行・強制労働の政策的・法令的根拠に関する資料収集,2.朝鮮人強制連行者数に関する資料収集および整理,の2つのプロセスに分けられる。 1については,1938年国家総動員法にもとづき策定された労務動員計画以降の動員政策とその関係法令の収集を行った。これに関する基礎資料は,石川準吉『国家総動員史』上下,資料編第1〜9,別巻,補巻(1975-88)に収録されている。しかし,朝鮮では「内地」と同一の法令が施行されたのではなく,「通牒」形式の命令により運用される場合が多いので独自の調査が必要である。このため『朝鮮総督府官報』および旧朝鮮総督府文書(韓国政府記録保存所所蔵)から採集する作業を行い現在,その作業を継続中である。 2については,現在収集可能な報告,統計等にもとづき,朝鮮人強制連行の3段階,すなわち「募集」(1939〜),「官幹旋」(1942〜),「徴用」(1944〜)ごとに動員数を集計した。あわせて日本「内地」への動員だけでなく,サハリン,満州,南洋等への「外地」動員および朝鮮内動員についても推計した。その結果,動員総数に400万人以上であることが判明した。当時の16〜40歳男子人口は約420万人であるから,そのほとんど全員に相当することになる。また「倭政時被徴用者名簿」(韓国政府記録保存所所蔵,1957年調査)により慶尚北道の動員実態の分析を行った。 このような膨大な人数に上る朝鮮人強制連行=労務動員の特質は,占領地等で行った労務動員とは異なり,植民地下で法令と命令にもとづいた制度的強制を通じて行った点にあるが,次年度には,さらに資料を補足収集して実証的に明らかにしたい,と考えている。
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