初年度のデータ分析、2年度の制度的分析を踏まえ、今年度はわが国の地方取引所の抱える問題を、地方取引所の地位が比較的高いとされるドイツの実例に照らして比較分析した。この研究では、わが国の地方取引所の低迷は、(1)競争的なマーケットメーカーが存在しないこと、(2)会員のほとんどが全国市場を基盤とする証券会社であることに関係していることが明らかにされた。さらに、(1)日本と同じ取引ルールを有する(すなわちマーケットメーカーが存在しない)フランスでは、全国的でない証券会社が地方取引所の中心的地位を占めていたにもかかわらず、近年において地方取引所が廃止されたこと、(2)マーケットメーカーが存在し、かつ地場証券会社が比較的重要であったイギリスにおいても20年前に地方取引所が廃止されたことを考えると、わが国地方取引所の将来を真剣に考える時が来たと言える。これらの研究結果をまとめた論文は現在執筆中であり、しかるべき形で発表される予定である。
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