当研究は3年間にわたり、日本の株式市場についての実証的、制度的分析を行ってきた。初年度は特にミクロ構造に注目し、intra-dailyのデータを使い、東京証券取引所では、取引高の大きい銘柄の価格変動と取引高の小さい銘柄のそれとの間に異なった時系列的特性があることを明らかにした。即ち、前者にあっては負の系列相関があり、米国のスペシャリスト市場の動きに似ているのに対し、後者では正の系列相関があり、いわゆるザラバ市場で想定されている値動きである。2年度は、大阪証券取引所、地方取引所及び店頭市場に注目をし、店頭市場では活発に取引されている銘柄に関しても、負の系列相関がないことが明らかにされ、これが成行き注文が許されていないことに起因している可能性を指摘した。また、マーケットメークの行われていない我が国において、地方取引所会員が東京証券取引所に会員権をもつ全国的な証券会社である場合、株式取引は必然的に中央に集中することが指摘された。これらの研究結果を踏まえ、3年度は、我が国の地方取引所の抱える問題を、地方取引所の地位が比較的高いとされるドイツの実例に照らして比較分析した。ここでは、我が国の地方取引所の低迷は、(1)競争的なマーケットメーカーが存在しないこと(2)会員のほとんどが全国市場を基盤とする証券会社であることに関係していることが示された。地方取引所が廃止されたイギリスやフランスの経験を考えると、我が国地方取引所の将来を議論する時が来ている。
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