本研究は、一方で地価が異常に高騰し他方土地の高度利用が進まないという問題に対し、土地税制および土地政策がそれらの問題の解決にどれほど有効に機能するかを検討するもので、年度途中にオーストラリアを訪問する機会を得て同国の土地規制、課税制度を調査するとともに、その隙に得た同国の土地政策における土地利用の外部効果を考慮した規制という視点を加えることによって、土地に関わる多様な議論の整理を試みた。各研究の概要はそれぞれ次のようである(第11項の論文参照)。 第1に、土地課税が地価および土地利用に与える影響について、議論の整理・明確化のため、土地供給が固定的である世代重複型の一般均衡モデルを用い、土地収益税および土地保有税等の地価への影響、各税の生産要素および宅地としての土地利用への影響、さらに、各税の経済厚生や所得・資産分配への影響、を調べた。この議論は、土地課税の地価および土地利用への影響を一般的な形で明らかにしている。 第2に、オーストラリアの土地政策および課税制度について次のような特徴を調査・確認した:i)保有税はわが国とほぼ同じ税率であるが、主たる住居がほぼ免税され、他方大規模の所有に対しては名寄せを行い軽度であるが累進的に課税される。譲渡所得税は、1985年のキャピタルゲイン税の導入以降かなり厳密かつ高率で課される。ii)土地利用規制については、土地利用が外部効果を生じる点が注目され、地域単位で土地利用計画が定められ、任意の利用が一般的に規制下に置かれている。 第3に、オーストラリアの土地政策における基本的な考え方を考慮し、土地に関わる問題がどのように捉えられ、どのような点が明確にされるべきかについて議論の整理を行った。
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