平成4年度は、企業文化についての理論的考察とアンケート調査を行った。理論的な研究は、文献を集め考察を加えたが、従来の研究で一番問題であるのは、企業文化の概念が多種多様で、このままでは、相互に研究の交換による進歩が不可能で、企業文化の研究を活〓化させるためには、統一的概念を形成することが必要不可欠とのことが判明した。欧米では「経営の志向性あるいはメンタリティー」とか「人間心理の集合的プログラミング」とか多義に用いられるが、わが国の学考の中では、「企業に共有された思考・行動様式」から、それをもう少し厳密に「企業のメンバーに信じ込まれた価値観・考え方および行動のパターン」という定義で考えている者が多い。理論的要請と現実的理解とを合わせると、この方向で、統一的な概念を作り上げることが可能ではないかと思われる。 理論の内容について、企業文化と経営活動、成果との関連については、企業の環境、経営活動(戦略と管理行動)が企業文化の態様に大きく影響しているが、同時に企業文化のあり方が、経営活動に大きく影響している相互関係にあることがわかった。企業の環境、経営活動と企業文化の間がうまく適合しているか否かが、経営成果の水準を決定しているというのが一つの理論的結論である。 以上の理論モデルを検証するため、日本企業700社に対しアンケート調査を実施し、現在分析中である。
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