本年度は当該研究の初年度にあたり、したがって、資料収集に重点をおいた一年となった。流通システムに関する研究は非常に広範囲に及び、そしてまた中国の最近の流通分野における急速な発展をみるにつけ、資料収集はきわめて大きな作業になっている。 中国は昨年二ケタの成長率を遂げ、そして今年も8-9%の成長率を目指すことが決定された。そして、先に日本の国会にあたる全国人民代表大会では「社会主義市場経済」が憲法のなかに明記され、この方針の下で経済運営が行なわれることになった。事実上、経済運営においては資本主義とは変わらなくなったといってよいであろう。そうであるならば、これまでマルクス主義の下でタブーとされてきた「商業ならびにサービス業」は市民権をえたことになり、今後、大いに発展することは間違いなく、中国経済のなかで重要な位置を占めることになるであろう。中国の改革・開放政策は人々の収入を増大させ彼らを豊かにした。これまでおかれてきた飢餓線上の状況と比べると比較にならないほど大きく変化し、日常生活にも活気がみられるようになった。これが中国の将来への活力となることは間違いない。その意味では、流通システムの研究は、中国の現状を把握するだけでなく、中国の行方をみていくうえでも重要なテーマといえよう。 また、中国の民主化について論議されることが多いが、この問題は経済の発展水準とも大きく関わっていよう。つまり、人々の生活水準が向上していくといろいろな面での選択肢は多様化していくものである。それは消費活動のみならず、文化活動や政治活動での多様化にもつながっていく。そういう時には民主化の動きは必然的に起こるものである。その意味では、流通システムの研究は経済分野のみならず、政治分野にも大きく関わっているといえよう。
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