研究課題
本研究は弾性を持つ曲線の動きを与える方程式:弾性熱方程式について、その解の存在および定常解への収束をリーマン多様体上で示すことを目的としていた。この方程式は4階の半線型偏微分方程式であり、しかも、常微分方程式との連立方程式である。そのため、解の短時間存在、長時間存在の両方が未解決であった。両方とも解のアプリオリ評価を行うことが証明の鍵になるが、特に、前者では解析学的手法が、後者では幾何学的手法が有効であると考えられる。現在までの研究によって、以下のことを解明した。1。解析学的な結果:「任意のリーマン多様体上で、任意の初期値に対して短時間解が存在する。」という完全に一般的な定理が証明できた。証明に用いた手法は、ユークリッド空間の場合と異なり、初期値の近傍においてのみのアプリオリ評価を行うことである。この手法は長時間存在の研究に応用することができないが、対応する弾性波動方程式の研究においても通用すると考えられる。2。幾何学的な結果:「任意のコンパクトリーマン多様体上で、長さが十分に小さい初期値に対しては解が無限時間が存在する。」という定理を証明できた。証明に用いた手法は、リーマン多様体をユークリッド空間に埋めんでユークリッド空間での評価を応用することである。具体例としては、断面曲率一定の球面上で初期値の長さが大円の長さよりも小さい場合があげられる。また、別の手法によって、平坦なトーラス上で任意の初期値にたいして解が無限時間存在することも示すことができた。また、上で解の無限時間存在が保証されたものについては、更にリーマン多様体が実解析的であるという条件の元に、定常解に収束することがわかる。以上の結果についての論文を現在準備中である。