活動的銀河中心核の活動性は、銀河中心の巨大ブラックホールにガスが流れ込むときの重力エネルギーの解放に由来する。このガスは銀河中心から数kpc程度に分布していたガスが銀河中心に供給されたと考えられるが、それがどのように起こるのかは明かではない。最近、相互作用銀河などで爆発的星形成銀河が観測されている。銀河銀河相互作用でバーポテンシャルが銀河に誘起され、それによって銀河の内側へガスが供給される過程が研究されている。しかし、この過程では銀河中心から数百pcから1-2kpcまでしかガスを供給することができない。銀河中心のブラックホール領域までガスを供給するには角運動量の輸送がさらに必要である。そこで銀河中心部へガスが集められるとガスの自己重力が重要になり、自己重力不安定性によってガスが銀河中心へ効果的に供給される可能性を考えた。この過程はすでに議論されているがこれを具体的に研究した例は少ない。この研究では、この可能性を線形解析と数値シミュレーションによって系統的に研究する。 銀河のポテンシャルにバーを仮定してガスがこのバーポテンシャルによって銀河の内側の領域にかき集められる過程を、ガスの自己重力を考慮して数値計算した。計算法はSoothed particle法を用いた。その結果、バーポテンシャルによって1.銀河中心領域にかき集められたガスから歪んだリングが形成されること、2.そのリングが自己重力不安定となって密度の高いガスの塊が形成されること、3.この塊同士が衝突して銀河中心にガスが強く集中するようになることなどを明らかにした。この結果は、イタリアでのESO workshopで発表し、一遍の論文にまとめ1992年度に出版した。
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