本研究は、大マゼラン雲に出現した超新星SN1987Aの提起した多くの新しい知見・未解決の問題点の中で、2つの大きな問題の解明をはかることを目的とした。すなわち、(1)中心部に形成されたはずのパルサーが、その誕生直後にどのような特性(回転、磁場等)をもっていたか、どのような形で観測されるか、(2)ハッブル宇宙望遠鏡によって明らかにされた、超新星の周りのリング状の星周物質の起源は何か、今後予想される超新星とリングの衝突で何が起こりどのように観測されるかを予測することである。 (1)超新星1987Aのパルサーに関しては、GRO・(Compton Gamma-Ray Obsevatory)の観測した50-140keVのHard X-rayと、最近複雑な変動を見せている光度曲線とを統一的に説明しうるパルサー光度と^<57>Co/^<56>Coの比を求めた。さらに、中性子星からの放射の周囲の物質による散乱・吸収を計算して、X線天文衛星ASCAによる観測可能性のを予測を与えた。 (2)のリングについては、超新星爆発の流体力学的モデルと星周リングのモデルとから、超新星とリングの衝突の2次元流体力学的計算の準備と実行を主としておこなった。 1993年3月末に、近傍の銀河M81に出現した超新星1993Jは、超新星1987Aと同様、多くの新しい知見・未解決の問題をもたらした。 (1)誕生直後のパルサーに関しては、超新星1993Jによって作られたパルサーが、ASCAによって観測される可能性があることを明らかにした。 (2)超新星と星周物質との相互作用については、その衝突の流体力学的計算のを実行し、その時に形成される高温プラズマからのX線放射を計算した。この理論と、ASCA、ROSAT、OSSEによるX線観測データとを比較検討することにより、星周物質の物理状態や爆発の規模を推定した。
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