本研究は、大マジェラン雲中の赤色脈動変光星についての最近の赤外線測光観測によって明らかになった赤色脈動変光星の周期光度関係に解釈を施し、この解釈に基づいて、これらの星の基本的諸量を求め、また脈動不安定帯を特定する事を目的として始めた。古典的セファイド型星についての周期光度関係は、良く知られているように、セファイド不安定帯がHR図に細い帯として存在する事を反映しており、一本の線で良くフィットする事が出来るのだが、赤色長周期変光星の周期光度関係はかなりの分散のある事を示している。我々は、これを、恒星の進化パスがセファイドと赤色巨星では、大きく異なる事に着目し、この分散を用いて周期光度関係を有効温度光度関係に効果的にマッピング出来る事を示した。これらの星の大気モデル系列について、詳細な線形振動の計算を継続しているが、これらのモデルと進化パスを連結させる作業を引き続き行う予定である。 平成5年度には、また、HR図水平分枝にあるRR Lyrae型星に古くから未解決のまま放置されていたBlazhko効果の解釈を試みた。適度な強さで且つ自転軸に適度な角度を成すような双極子の磁場の存在を仮定すると、その脈動の固有関数への摂動効果まで考慮に入れる事により、観測されるようなBlazhko効果を説明できる事が判った。この様な磁場の存在の有無を観測的に明らかにする事により、この解釈の検証が出来よう。また、同様の解釈により、A型特異星で観測される振動現象を説明できる事を明らかにした。この場合には磁場の存在や強度やおよその形状が既に知られている。双極子の他に四重極子磁場の成分を考慮し、これらの脈動固有関数への摂動を考慮する事により、これらの星の振動の基本的性質を説明するとともに、これらの星の基本的諸量を決定する事が出来た。また、太陽型の振動励起機構について考察し、晩期型星で励起が期待される振動の振動数を明らかにした。この励起機構は、赤色長周期変光星に見られる不規則変光の一因を担っている可能性を持つ。
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