本課題の目的は、低温度星の赤外線波長域での測光、分光スペクトル観測を行ない、星の進化の最終段階を観測的に解明しようというものである。星の進化は、その星の質量により異なった経路をたどる。大多数を占める中小質量の星は、低温度赤色巨星から漸近分枝星を経て、惑星状星雲へと移行していくものと考えられている。この漸近分枝星の多くは脈動によって質量放出を行ない、その結果星の周りにできた塵(星周塵)にとり囲まれ、赤外波長での観測が星周塵及び星の進化を知る上で重要である。 我々は、北京天文台の赤外線望遠鏡に我々の赤外測光器を設置して、また宇宙科学研究所の望遠鏡に赤外線分光器をとりつけて天体観測を行なった。更に、これまで行なってきた観測のデータを解析し、これらをまとめて星の最終段階の進化について新しい知見を得つつある。その内の重要な点の一つは、本報告の「研究発表」の項の論文に詳しく論じられているが、次のようなものである。我々の得た近赤外波長域のデータと、IRAS衛星によって得られている遠赤外データを総合した赤外域全体のスペクトルを用いると、漸近分枝にある低温度星から惑星状星雲への移行を、赤外スペクトルの大きな変化としてはっきりとらえることができるという点である。これらの低温度星は、その星の表面大気の組成(特に酸素と炭素の比)のちがいによって3種に大別されている(O-rich星、炭素星(C>0)、S型星(C〜0))。前述の進化の過程は、低温度星の多数を占めるO-rich星についてはかなりわかってきたが、炭素星やS型星についてはまだよくわかってはいない。今後の観測が期待される。 今後の観測を更に効率的に進めるための分光器の改良も進めている。新たに多素子赤外線検出器導入のための準備を行なった。
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