超新星爆発ような不安定現象の数値計算は非常に難しい問題が付きまとう。もともと、現象がカオス的だという点である。計算の格子点を増やしていくと、物理現象が収束していくような現象なら、適切な問題。逆に、計算の格子点を増やしていけばいくほど細かいパターンの現われてくる現象なら、不適切な問題といってよく、現象はカオス的となる。わたしたちが、計算の格子点を128×128、256×256、512×512、1024×1024と増やしていった場合に、ミキシングのパターンは次第に細かくなっていって収束はしない。 では、意味のある物理量は取り出せないのであろうか。そんなことはない。わたしたちは、全体としてどこまで混ざったかを表わす量として、混合幅という概念を見つけた。これは、たとえばニッケル56は速度でいえば何km/sから何km/sまで混ざるかという量であり、ある時間をとっていえば、半径で何cmから何cmまで混ざっているかという量である。このような巨視的な量は、たとえ現象がカオス的であってもきちんと収束する。 このような、収束した混合幅をもとにして議論すると、数値計算に伴う不定性を極力排除することができる。SN1987Aの観測を説明するにはどうしても、不安定の種として5%程度のゆらぎを仮定しなければならなかった。逆に、5%程度以上あれぼなんとか定量的に観測を説明できる。次に問題になるのは、この不安定の種の問題である。計算の3次元化とともに、今後の課題である。
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