研究概要 |
今年度は,当初計画を若干変更して,電気力学的過程よりも,ブラックホールの熱力学的安定性に重点を置いて,ヘブライ大学ラカー物理学研究所のJ.Katz教授と共同研究を行った.回転している非荷電の,いわゆるカー・ホールの熱力学的な安定性について,Katzの“転換点法"を用いて行った(Kaburaki,Okamoto and Katz 1993,印刷中).更に,一般の回転し帯電しているカー・ニューマン・ホールの安定性について,同じくKatzの方法を用いて研究した.ブラックホールといえども有限の温度を保ち,その温度に対応した輻射を出しているが,その輻射の量が十分小さい場合について,様々な熱力学的な環境を想定して,角運動量J及び電荷Qがどのようにブラックホールの熱力学的な安定化に寄与するかについて明かにした.その結果については,論文化して1993年1月Katz,Okamoto and Kaburakiの連名で,Class.Quantum Gravityに投稿した. また,国立天文台を訪れている文部省外国人研究員L.Mestel教授とともに,ブラックホール電気力学について共同研究を開始した.これまでのForce‐free近似に換えて,プラズマのイナーシャと輻射によるダンピングを考慮して,ブラックホール磁気圏の理論を構築中である.そして,磁気圏磁力線に沿った荷電粒子の運動によるγ線放射のメカニズムを明らかにする.活動銀河核の中心には回転しているブラックホールが存在すると想定されていて,なおかつγが観測されているので,ブラックホール磁気圏内でのγ線放射のメカニズムを解明することは重要な意義がある.
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