研究概要 |
国立天文台平成4年度文部省外国人研究員L.Mestel,東北大受託大学院生堀内真司とともに,ブラックホール磁気圏の構造について研究を行った.ブラックホール磁気圏でのいわゆるBlandford‐Znajek過程では,カー・メトリックに特有の“慣性系の引きずり"の効果による内向きと外向きのプラズマ流が発生する.これはある種の遠心力風であるが,これら更に“non‐corotational"なポテンシャルの電場による粒子加速を調べるため,今回は元の遠心力風が吹くことによってどのような動径電場が形成されるかをMacdonald&Thorneの“3+1"形式の一般相対論を用いて調べた.現在,レフリード・ジャーナルに投稿すべく,論文化の作業を進めている.更に引き続き非定常磁気圏についても考察する予定である. 前年度に引き続きJ.Katzと,有限の大きさの容器内に共存しているシュワルツシルト・ホールと黒体輻射から成る系の熱力学的安定性と熱力学的なゆらぎの効果を調べた。この系は全エネルギーが固定されたミクロカノニカルなアンサンブルである.Gibbons&Perry(1977)の方法を発展させて,各種物理量の平均自乗ゆらぎ量を求め,比熱との関係を明らかにした.この容器から純静的にエネルギーを抜き取るときの,ホール・輻射系の振る舞いあるいはブラックホール消滅についても考察した.これについても論文化の作業を進めている.鏑木は,従来の熱力学的な安定性の議論で不明瞭であった,平衡状態の変分と非平衡状態の変分を区別して,新しい純熱力学的安定性の理論を構成し,従来の結果あるいは解釈を精密化した.
|