研究概要 |
ブラックホール天体物理学に関して,L.Mestel(サセックス大),J.Katz(ヘブライ大)両教授が文部省外国人研究員(それぞれ平成4年度,5年度)として国立天文台に長期滞在し,応募当初に予定していなかった両教授との共同研究が実現した.それに伴って,研究内容及び手法を若干変更して,より一層の研究の発展・深化を目指した. 1.ブラックホール・パルサー電気力学,磁気圏論 ブラックホール磁気圏は一般相対論的効果(慣性系の引きずり)により,内部・外部両磁気圏に分けられる.外部磁気圏はほとんど平坦な時空にあると考えてよく,パルサー型磁気圏で近似できる.内部磁気圏は慣性系の引きずり効果で創り出されるもので,プラズマ風が内向きにホール地平面に向けて吹く.岡本は,Mestel,堀内真司(東北大受託院生)と共同して,内部磁気圏における電流の流れと粒子加速の研究を行った.そして“非縮退"電場形成・粒子加速・gamma線発生・ペア創生の必然性を明らかにした.この日英共同研究は今後も続行される.鏑木は工藤哲洋(東北大院生)とともに,有限の電気抵抗を考慮して,高速回転星から吹く電磁流体風の構造を明らかにした. 2.ブラックホール熱力学的安定性 岡本・鏑木はKatzと共同で,カ-・ホール,一般のホールについて熱力学的特性及び安定性の限界を明らかにした.岡本はKatz,R.Parentani(ヘブライ大)とともに有限容器中のブラックホールとホーキング輻射の共存系の熱力学的安定性とゆらぎの関連性を明らかにした.鏑木は従来の熱力学的安定性の判定基準の見直しを行い,より精密化した判定基準を提案した.Katzとの共同研究は今後も継続される.
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