研究概要 |
今年度は次の目的を設定した:(1)高密度域での超新星物質の状態方程式や熱力学諸星を現実的アプローチにより求める,(2)これに基づき生まれたばかりの中性子星の特質,冷却・進化に伴う現象を論ずる,(3)超新星物質中の中性子過剰核物質の性質を議論する。 目的(1)(2)の達成には大がかりな計算を伴うが,まず,予備的段階として簡単化を採用し(超新星物質→中性子十陽子十電子 と近似),全体の見透しを得ることに重点を置いた。超新星物質の状態方程式(EOS)は通常の中性子星物質よりも固くなること,このため誕生時の中性子星は熱い太った中性子星であり,冷却・収縮に伴って重力エネルギーの解放とスピンアップを伴うこと,を論じた(別掲論文,NO.1,2)。また,超新星物質中の陽子成分の割合はどの程度か(別掲論文NO.3),π中間子凝縮が起っていると超新星爆発機構にどう影響するか(別掲論文NO.4),についても議論した。この予備的段階で得られた結果と経験にもとづき,より実際的計算へと研究を発展させているがその現況は次の通りである。 (1)について:ニュートリノ縮退,β平衡下にある{n,p,e^-,v}系を対象に有限温度のハートリー・フォック方程式系を解き,これら成分の混在比と系全体のEOSを等エントロピーという条件の下で導出する。成分比は殆んど密度に依存せず一定である,これはニュートリノ縮退の効果による,EOSは主としてレプトンの縮退圧のために通常の中性子星物質よりずっと固くなる,という結論が得られた(別掲論文NO.5,6,及び論文準備中)。この結果を用いて目的(2)へのアプローチを行うことは現在進行中である。 (3)について:高温・高密度の非対称核物質の計算はほぼ終了した。結合エネルギー,非圧縮率,気相・液相転移,等々についての結果と議論を次年度の早い時期に論文としてまとめる予定である。
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