研究概要 |
原子核を標的とした中間子生成反応の理論的研究を行った。 最初に、相対論的な運動エネルギーを持ち、クラインーゴルドン方程式によって記述される粒子の包括的な生成反応に対して、グリーン関数の方法を拡張した。第二量子化の定式化を用いることによって、クラインーゴルドン方程式によって記述される粒子に対しても、シュレディンガー方程式によっと記述される粒子と同様に、抱括的な生成断面積が、グリーン関数を用いて表されることを示した。 中間子には、原子核内では、核子対によって吸収されるために、真空中では安定な状態が、共鳴状態となり幅を持つ、また、共鳴状態ではない連続状態も存在する。原子核を標的とした中間子生成反応において、共鳴状態とバックグラウンド的な連続状態の相対的な重要性を調べた。原子核の内において中間子が生成される場合には、バックグラウンド的な連続状態の寄与が支配的であるのに対して、原子核の表面付近において中間子が生成される場合には、共鳴状態の寄与が支配的であることがわかった。 次に、(π^-,γ)反応による深く束縛されたパイオン原子生成反応に,グリーン関数の方法を適用した。電磁場とパイオンの相互作用を,ディラックの置きかえによって導入すると,(π^-,γ)反応の抱括的な断面積は,適当な有効演算子とグリーン関数を用いて表されることがわかった。また,(π^-,γ)反応による深く束縛されたパイオン原子状態の生成反応断面積は,単位立体角・エネルギー当たり数十マイクロバーンであること,およびバックグラウンドは比較的小さいこと,従って,反応が表面付近でおこっていることがわかった。
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