第一に、昨年度に引き続いて、原子核を標的とするハドロン生成反応をグリーン関数の方法により調べた。グリーン関数とハドロン生成反応断面積の関係、グリーン関数の特異性・和則を解析的に考察した。また、ハイパー核の生成、ハドロン原子生成にグリーン関数の方法を適用した。 これらの研究成果を総合報告としてまとめ、Progress in Particle and Nuclear Physicsに投稿した。第二に、ハドロンの核物質中でのふるまい及びハドロンと核子との相互作用をQCD和則を用いて調べた。QCD和則を用いて計算した核子と核子の散乱長は、実験値と定性的に一致すること、ハイペロンと核子の散乱長は、核子と核子の散乱長に比べて小さくなること、π中間子と核子の散乱長は、カレント代数によるTomozawa-Weinberg関係式に一致すること、K中間子と核子の散乱長は、カレント代数による結果とΛ(1405)の寄与だけ異なり、Kp原子の実験結果と一致することを見いだした。 第三に、高エネルギー重イオン衝突におけるハドロン生成を調べた。時間に依存する平均場の方法で時間発展を定式化し、シグマ模型を用いて局所的にエネルギーが集中した(高温相にある)状態を初期条件とし時間の経過とともにどのようにエネルギーが分散し(低温相に移行して)、ハドロンが生成されるかを調べるための予備的な考察を行った。
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