研究概要 |
本年度は正規化により非摂動的に定義された量子重力および弦理論の模型である,行列模型の研究とその連続極限を記述していると孝えられるLiouville模型の研究を主なテーマとして行った。 1.行列模型におけるブラックホール解 行列模型を2次元の時空をターゲット空間とみなしたときの臨界弦理論と解釈した場合,未解決の重要な問題の一つとして,ブラックホールのような非自明な時空構造がどのように取り入れられるのかという問題がある。これは量子重力理論としての弦理論の本質をとらえるためにも是非とも理解を深めなければならないテーマでもある。米谷はブラウン大学のJevicku氏とともに,この問題の鍵になると思われる,積分変換を発見した。この変換はブラックホールと通常の行列模型のタキオン場の従う方程式を互に結びつけるものである。この結果に対して適切な幾何学的解釈を与えることができれば,弦理論に基づいたブラックホールの非摂動的量子論の定式化が可能になると期待でき現在さらに研究が進行中である。準備的な結果をまとめた論文はプレプリントとして一部の研究者に発表しているが本論文で執筆予定である。 2C=1物質場と結合した二次元量子重力における無限次元対称性 行列模型を2次元の量子重力とみなした場合,その時空的解釈を解明するには,この模型が示す無限次元の対称性W_∞が重要である。この対称性は行列模型の連結極限に対応すると支えくれるLiovville理論においても,groundringと呼ばれるオペレータ環に作用する。しかし従来の議論では宇宙項が取り入れられていない点で極めて不十分である。 風間はハンブルグ大のNicolai氏とともに,局所的な困果律の解析に基づいて宇宙項を厳密にオペレーター形式で取り扱うことができる正準変換を発見した。これらの結果をまとめた論文を現在執筆中である。
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