1.行列模型と2次元ブラックホール:米谷は行列模型のハミルトニアンの選び方によらない一般的性質、背景依存性、および共形場理論での2次元ブラックホール解の性質を詳細に検討することにより、以下のことを示した。(1)ブラックホール解の回りでのtachyon場に対する線形化された場の方程式から、通常の行列模型が記述していると考えられる平坦時空でdilatonとtachyonが凝縮した場合の場の方程式への変換を引き起こす場の再定義が存在すること。(2)この変換の存在が行列模型によるブラックホールの記述のための必要条件であること。(3)ブラックホールの回りでの弦の相互作用の強さはブラックホールの質量の2乗根と反比例の関係にあること。(4)ブラックホールの回りでのtachyonの散乱振幅は、tachyonの凝縮がゼロのとき奇数粒子数の場合ゼロであるべきこと。これらの性質は、標準的なc=1行列模型では満足されない。さらに詳しい分析によって通常の模型のハミルトニアンに新しい項を付け加えたdeformed modelを導入することにより、これらの性質がすべて満たされることを発見した。2.量子リユーウビィル理論:風間は量子リユーウビィル理論につき、Otto及びWeigtによって開発されたオペレーター形式を考察しなおし、局所的因果律の要請から導かれる方程式の解として、今までに知られていなかった異なる解が存在することを指摘した。この解を用いると、リュウヴィル場の満たすべきHeisenberg運動方程式がμ^2の全次数で満たされることを示した。3.dilaton2次元重力模型:量子重力の構造を、自由度の少ない厳密に扱える簡単化された模型で調べようという観点から見るとき、ディラトン場及び質量をもたないN個のボゾン的物質場と結合した二次元重力模型は興味深い。しかし、通常の近似方法ではディラトン場と重力場は量子化されておらず、物質場の数N及びブラックホールの質量が大きいときにのみ有効であるため、概念的問題の考察には不十分である。風間はN=24の場合には模型が、リュウヴィル場のオペレーター形式において開発された非線形かつ非局所的な正準変換を利用することによって、central chargeがちょうど26であるような背景電荷をもつ共形不変な自由場の理論に写像することができ、BRST量子化法を用いて理論の「物理的状態」を完全に決定できることを示した。さらにこの結果に基づき物質場の入射衝撃波によってブラックホールが生成される過程に対応する物理的状態を構成することに成功した。
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