今年度の研究実績は次の三項である。 1. “horizontal(vector-like)symmetry X standard gauge symmetry"の形をしたモデル一般に関して、クォーク・レプトンの質量およびCabibbo-小林-益川(CKM)混合を出せるかという観点から、良い点や問題点について分析した。クオーク・レプトンの質量を導く点に関しては、Schwinger-Dyson方程式を用いた一般的解析から、このクラスのモデルはhorizontalゲージ場の質量構造から導き得ることを示した。しかし一方、CKM混合が導けない事も明らかとなり、一般にchiral horizontal対称性でなければならない事を示した。 2.超対称な極小標準模型に於いて、topとbottomに質量を与える2つのHiggs場のYukawa結合定数と質量とが、GUTスケールに於いて等しい、g_t=g_h、m_1=m_2という条件を置いた時、果たしてtopとbottomの大きな質量比が導けるかという問題を、くりこみ群方程式を用いて議論した。この条件は、SD(10)やE_6大統一理論などで要求されるものであるが、U(1)hyperchargeやC-レプトンによるSU(2)_Rの破れの効果と、QCD相互作用の相乗効果により実現できることを示した。 3.第2項のようなくりこみ群で走らせたパラメータを用いた有効ポテンシャルは、一般にくりこみ点の選び方にかなり依存し、信頼できる予言が難しくなる。これは有効ポテンシャル自身がくりこみ群方程式を満たしていない事から来る欠陥である。この欠陥を避けるベく、我々は、任意のループ次数の計算で、くりこみ群を満たすように有効ポテンシャルを求める一般的方法を新しく提唱した。この方法は、本質的には質量スケールが一つの場合に適用できるものであるが、decoupling定理をうまく応用することにより、全く一般の系に対して適用できることを示した。
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