我々は、フロントエンドにパイプライン転送機構を組み入れた、新しいデータ収集システムの開発をおこなった。フロントエンドシステムには、TRISTAN用に開発されたTKO BOXシステムを使用した。TKO上のフロントエンドモジュールでの処理を、サンプル&ホールドとA/D変換及びデータ読み出しの3つの部分に分け、それらをパイプラインで接続した。これによって、データ読み出しの間でも、入力信号の処理が行えるようになり、データ収集系のデッドタイムを大幅に削減することができる。 またA/D変換処理を監視することで、フラッシュADCを使用しなくとも、従来の比較的遅い逐次比較型ADCを使用したフロントエンドモジュールにもパイプライン処理が適用できるようにした。また、パイプライン段数最小限にして、TKO規格の変更を少なくして、コストパフォーマンスを高めた。このようにして決定した新しい仕様に基づいて、フロントエンドモジュールとゲートコントローラー及びトリガーコントローラーを開発制作した。 高エネルギー物理学研究所陽子加速器でのE162実験のカロリメーターテストでこのシステムの性能を評価した。その結果、デッドタイムを従来の30〜50%に短縮できることを確認した。また、安定性、信頼性も十分であり、エラーレートは10^<-5>以下であることがわかった。
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